導入修習と民事保全法


導入修習の時の民事保全に関する講義を思い出しながら、二回試験対策のために民事保全に関する重要事項をまとめてみました。

おそらく、導入修習時に学習した民事保全に関する重要事項は全て盛り込むことができているはず!

1.民事保全の種類

・仮差押え(民保20条1項)
・係争物に関する仮処分(民保23条1項)
 ・占有移転禁止の仮処分
 ・処分禁止の仮処分
・仮の地位を定める仮処分(民保23条2項)



2.民事保全の執行機関


(1) 占有移転禁止の仮処分:


執行官(保全52条1項・執行168条)


(2)処分禁止の仮処分:

保全命令を発した裁判所(保全53条3項・47条2項)


(3)仮差押え:

  • 不動産 → 保全命令を発した裁判所(保全47条2項)
  • 動産 → 執行官(保全49条)
  • 債権 → 保全命令を発した裁判所(保全50条1項)



3.民事保全の執行方法

(1)占有移転禁止の仮処分:

民事執行法168条1項
+公示(保全規則44条)



(2)処分禁止の仮処分:

登記嘱託による処分禁止の登記(保全法53条1項・3項・同法47条3項)


(3)差押え:

  • 不動産 → 登記嘱託による登記(保全法47条1項・3項)
  • 動産 → 執行官による保管(保全法49条)
  • 債権 → 第三債務者に対する弁済禁止命令(保全法50条1項)



4.民事保全の効果

(1)占有移転禁止の仮処分:



当事者恒定効(保全62条)

→ 仮処分執行後の占有者であることを証明すれば、承継執行文の付与を受けて強制執行を行うことができる。仮処分執行後の占有者であることは、仮処分の執行調書によって証明できる。


* これに対し、正権限者や善意の非承継占有者は、執行文付与に対する異議の訴えや執行文付与に対する異議の訴えによって救済を受けることができる(執行34条)。


(2) 処分禁止の仮処分:



当事者恒定効(保全58条)

→ 後れる登記は単独で抹消できる(保全58条2項・不動産登記法111条1項)

* なお、保全命令は発せられると債務者に対する送達を待たずに即時に執行力が生じる(43条3項)。一方で、保全命令が債権者に送達された日から2週間が経過すると、保全執行をすることができなくなってしまう(43条2項)。



3.民事保全の申立書

(1) 規則13条

申立書に記載すべき事項については規則13条を参照にすれば良い。


(2) 申立ての趣旨

申立ての趣旨の代表例は次のようなもの


占有移転禁止の仮処分
  • 債務者は、別紙物件目録記載の物件に対する占有を他人に移転し、又は占有名義を変更してはならない。
  • 債務者は、上記物件の占有を解いて、これを執行官に引き渡さなければならない。
  • 執行官は、上記物件を保管しなければならない。
  • 執行官は、債務者に上記物件の使用を許さなければならない。
  • 執行官は、債務者が上記物件の占有の移転又は占有名義の変更を禁止されていることおよび執行官が上記物件を保管していることを公示しなければならない。


処分禁止の仮処分
    債務者は、別紙物権目録記載の不動産について、譲渡並びに質権、抵当権及び賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。



(3) 申立ての理由

申立ての理由には「被保全権利」と「保全の必要性」を具体的に書かなければならない。さらに、立証を要する事由ごとに証拠も記載しなければならない(規13条2項)。

なお、被保全権利では「請求原因」以外にも「予想される抗弁の不存在自由や再抗弁事由」も書くのが実務である。



(4) 疎明資料

申立書には、疎明資料を添付するのが原則である。疎明資料としては、次のものが重要となる。


【全部登記事項証明書】
:債権者、債務者及び第三債務者が法人の場合
→ 規則6条・民事訴訟規則18条・15条


【委任状】
:弁護人が代理人となる場合
→ 規則6条・民事訴訟規則23条1項


【登記事項証明書(不動産)】
:仮処分の対象が登記された不動産の場合
→ 規則23条・規則20条1項1号イ


【固定資産評価証明書】
:仮処分の対象が不動産の場合
→ 規則23条・規則20条1項1号ハ



※ なお、実務では、これらの疎明資料に加えて【報告書】も提出される。報告書とは、債権者本人や第三者が代理人弁護士や裁判所あてに作成したものである。この報告書を作成するに際しては保全すべき権利又は法律関係および保全の必要性などについて具体的に記述する。



4.保全命令に対する不服

保全命令に対する不服申立ての種類としては次のものがある。

・保全異議(保26条〜)
・保全取消し(保38条〜)


前者は、被保全権利の有無・保全の必要性を争うために認められたものである。


後者は、保全命令の存在を前提とする。その上で、発令後の事情変更・特別事情、その他の事由により命令の取り消しを求めるものである。


* なお、保全異議の申立ては書面でしなければならない(保全規則1条)。この書面には、申立ての趣旨及び理由を記載しなければならない(保全規則24条)。


6.民事保全と本案訴訟

民事保全はあくまでも本案訴訟の準備としてなされるものである。

そのため、債権者がいつまでたっても本案訴訟を提起しないときに、保全命令を取り消すという制度(起訴命令制度:民保37条1項・3項)が設けられている。


5.仮差押えの諸問題

(1)仮差押えの対象物

何を差押えの対象物として選択するかを検討するに際しては、次の事情を確認すべき。



・差押えの可能性
・回収可能性
・保全の必要性(債務者に与える影響)



(2)対象特定の必要性

不動産や債権の仮差押命令の発令を求める際には、対象を特定する必要がある(民保21条・規則19条・18条)。


* 動産の仮差押命令の発令を求める際には対象を特定する必要がない。しかし、保全執行を申し立てる際には、対象動産が所在する場所を申立書に記載しなければならない(保全規則40条・執行規則99条)



(3)担保の額

保全命令の発令は、「担保」が必要とされることがほとんどである(民保14条)。


担保の額は、一定の基準があるものの(白表紙29頁参照)、裁判所の自由な裁量によって決定される。


ただ、仮差押えの場合には、仮差押執行により債務者が受ける主な損害が「債務者が差押目的物を処分することができなくなる」という不利益であることから、基本的には、担保の額も目的物の価格に応じて定められる。


そして、目的物に担保権の負担がある場合には、被担保債権額を控除して目的物の時価を算定することになる。


根抵当権の場合、実際の債権額を控除すべきではあるが、多くの場合にこれは不明であるため、登記されている極度額を控除することになる。


* 仮差押え担保基準の一例
  • 貸金債権や賃料債権、売買代金債権を請求債権として不動産や登録自動車を対象とする場合:10~25%
  • 損害賠償請求権(交通事故除く)を請求債権として不動産や登録自動車を対象とする場合:15~30%



6.最後に…

次は、時間があれば、民事執行の重要事項についても書こうと思います!







執筆者:  匿名希望

投稿日時: 2018年11月13日14:26

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