平成29年・30年度の裁判例を読んで…


自分のメモのために、平成29・30年度の裁判例の中から気になったものを挙げておきます。

個人的に重要だと感じたところだけを抽出しているので、その点は御了承下さい。また、勝手な解釈が入ってしまっている可能性がありますが、その点も御了承下さい。

1.最判平成30年2月15日



1点目:
親会社は、子会社の従業員に対しては、必ずしも、その職場環境に関して労働者からの相談に応じて適切に対応すべき義務(セクハラ被害の相談に対応する義務等)を負わない。

特に、次のような場合には同義務を負わない。

  • 親会社は、子会社の従業員に対し、指揮監督権を行使する立場にない。
  • また、親会社は、子会社の従業員から実質的に労務の提供を受けているわけではない。
  • さらに、 親会社は、自身で整備した法令遵守体制において、自身が同義務の履行に責任を負う立場とはしていない。




  • 2点目:
    親会社は、自身でコンプライアンス相談窓口を設け、子会社の従業員等に対してその存在を周知して利用を促し、現に相談を受け付けていた場合、子会社の従業員等から同窓口に相談が寄せられた際には、適切な対応をすべき信義則上の義務を負う場合がある。




    2.最判平成29年12月7日(自動車引渡請求事件)

    自動車の購入者と販売会社との間で、売買代金債権を担保するために当該自動車の所有権を販売会社に留保する旨の合意がされたケースで、売買代金債務の保証人が販売会社に対し、保証債務の履行として売買代金残額を支払った後、主債務者である購入者の破産手続が開始した場合、その破産手続開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは、保証人は、上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができる。





    3.最大判平成29年11月29日(強制わいせつ等)

     故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当ではなく、昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。

     もっとも、客観的な「わいせつ性」の判断に際しては、行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があることは否定し難い。




    4.知財高裁平成30年1月15日(営業秘密使用差止等請求控訴事件)



    1点目:
    違法行為により権利利益を侵害された者が提起する差止請求、廃棄・謝罪広告の請求は、法律関係の性質としては「不法行為の問題」である。

    したがって、通則法17条によって準拠法を決定すべきである。


    2点目:
    不正競争防止法2条1項8号所定の「重大な過失」とは、取引上要求される注意義務を尽くせば容易に不正開示行為等が判明するにも関わらず、その義務に違反する場合をいう。

    そして、「取引上どのような注意義務が要求されるか」に関しては
  • 問題となる営業秘密の性格
  • 当該営業秘密の入手経路
  • などが考慮要素となる。

    たとえば「対象となる営業秘密が、その利用により保有者に深刻な不利益を加えうる性格のものであること」は、調査義務を基礎付ける一事情となる。

    また「ある営業秘密を、通常の営業活動の中で取得したこと」は、調査義務を否定する一事情となる。

    参考:「その営業秘密について不正開示行為(前号に規定する場合において同号に規定する目的でその営業秘密を開示する行為又は秘密を守る法律上の義務に違反してその営業秘密を開示する行為をいう。以下同じ。)であること若しくはその営業秘密について不正開示行為が介在したことを知って、若しくは重大な過失により知らないで営業秘密を取得し、又はその取得した営業秘密を使用し、若しくは開示する行為」(不正競争防止法2条1項8号)


    *** なお、この裁判例は、営業秘密が記載された文書に「Confidential」の記載があったとしても、それだけで調査義務の存在を基礎付けることはできないとしている。





    5.大阪地方裁判所平成30年3月1日(損害賠償請求事件)



    1点目:
    タイムカード等の客観的な記録がないケースにおいて、同僚の発言等を基に、従業員が3か月間休みなく働いていたことを認定した。



    2点目:
    過重労働と自殺との因果関係の判断につき、労災の業務起因性の基準を参照した。



    労災の業務起因性の基準:平成23年12月26日策定の「心理的負荷による精神障害の認定基準」は

    ①対象疾病を発症していること

    ②対象疾病の発症前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

    ③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象疾病を発症したとは認められないこと

    のいずれの要件も満たす対象疾病について、労働基準法施行規則別表第1の2第9号に該当する業務上の疾病として取り扱うこととしている。

    その上で

  • 1か月以上にわたって連続勤務を行った場合
  • 発症直前の連続した3か月間に、一月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行い、その業務内容が通常その程度の労働時間を要する者であった場合
  • を「業務による強い心理的負荷があった」と判断される具体例として挙げている。





    執筆者:  匿名希望

    投稿日時: 2018年12月1日10:05

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